本場奄美大島紬の着崩れせず、着込めば着込むほど肌になじむ着心地の良さを実現しているのは、手織りだからと言っても過言ではありません。

ほとんどの工程が手作業の本場奄美大島紬ですが、織物となるために織機を使う2工程があります。

ひとつは「絣締め(かすりじめ)」、もうひとつは「はた織り」。

 

大島紬が「世界三大織物」として、ゴブラン織り、ペルシャ絨毯と肩を並べる理由は「絣締め(かすりじめ)」という工程にあるから。

「絣締め」とは、先染めする糸に柄を入れていくための作業で、
染めないところが染まらないように木綿糸で隠すように締めていきます。

糸自体が環境により1本1本伸び縮みします。そんななかでも1㎜の誤差も許されません。

小さなズレはやがて大きなズレになり、織物として織り上がったときの出来栄えを大きく左右してしまいます。

そのため、糊張り糸1本1本に一定の長さで印をつけ、その印がいつも同じ場所にくるように「締め機」と呼ばれる大きな織機を使って手作業で絣締めを行っていきます。

ちなみに「絣(かすり)」とは、糸または、染まった部分と括られて染まらない部分のある模様をいいます。

この作業により、先染めする糸に染め上げるところ、染めないところを決めた「絣筵(かすりむしろ)」というものを織り上げていきます。

 

反物に仕上げていく「はた織り」。

織りには、「平織り」「斜紋織り(綾織り)」「繻子織り(朱子織)」があります。

本場奄美大島紬は経(タテ)糸、緯(ヨコ)糸を一本ごとに交互に浮沈して織っていく「平織り」です。

この「平織り」をしていくにあたって、先の「絣締め」から先染めされた糸には、柄を形成する染まった部分、染まっていない部分でできた絣点を合わせて織っていくことで柄ができ上がっていきます。

こちらもズレないように丁寧に織っていきます。

本場奄美大島紬は、糸1本1本に柄の一部となる点を染色するために織り、点の入った糸を柄に合わせていきながら反物にするために織り上げて、反物の柄を表現しています。

どちらも本当に神経を使う作業で、尊敬するばかりです。