和紙は世界中で重要文化財の修復に使われています。

海外の方は、和紙を見ると洋紙にない薄さと軽さからの美しさ、あたたかみや風合いなどの感触を絶賛します。

和紙は用紙に比べ保存性が高いのも大きな理由ですが、薄くて強い特性が文化財の保存修復にかかせない材料となっています。

 

絵や書物を保護するために多用される和紙

イタリアやフランス、スペインをはじめとするヨーロッパの図書館や博物館、美術館にある修復部門で使われています。

修復するものは、紙に書かれた油絵などの絵画、書き記された書物、印刷された版画、そして壁画などがあげられます。

 

保存性が高い和紙は、保管するための書物に最適

ヨーロッパで使用されている紙はパルプが使われており、短期で見ると強度は高いのですが保存性が低い紙になってしまいます。
これは、植物の主成分が関係し、パルプにはリグニンという親水性が低い成分が含まれ、これが多く紙に残ることで変色の原因となり、紙が変質し劣化してしまいます。
新聞紙を放っておくと黄色く変色しますので、わかりやすいかと思います。

和紙は、原料である楮や雁皮はこのリグニンがもともと少ないとともに、草木の灰や消石灰などを使ってゆるやかな条件で原料処理をしています。
そのため、和紙は保存性が高く千年以上も昔の書物が残っているのはそのためです。

 

薄くやわらかいのに、折り曲げても破れにくい和紙

和紙は、パルプと異なり長い繊維から成り立っています。
この長い繊維がきれいに分散されていることから薄く強い紙を実現しています。
この薄い和紙はヨーロッパの紙に比べ薄く透明性が高いことから、文字や絵が書かれた書物の表面に貼り付けても、和紙の下になった文字や絵が読めなくなることがありません。

また、本は綴じ糸で縫い合わせた製本で、折り目が痛みます。
和紙は薄いにも関わらず折り曲げても破れにくい強い紙であり、この折り目に沿って、裏表から張り合わせて補強しています。

油絵の修復には、油絵の絵具層が剥がれ落ちるのを防ぐために剥離が進行しないよう和紙を貼り付けます。

もし、海外観光地の壁画などで短冊のような形をした印を見つけたら、それは修繕に和紙を使っていることになりますので、海外で日本の文化が活躍していると感じていただけたら幸いです。