独立行政法人国立文化財機構(本部:東京都台東区)、東京国立博物館と文化財活用センターは、江戸時代の絵師・尾形光琳が描いた「重要文化財 小袖 白綾地秋草模様(通称〈冬木小袖〉)」の修理を個人・企業からの寄附で行う「〈冬木小袖〉修理プロジェクト」を、2020年1月から行ってきましたが、寄附額が1,500万円を超え、当初の目標を達成しました。

「〈冬木小袖〉修理プロジェクト」では、大切な文化財をみんなで未来へつなぐことを目指し、初音ミクとのコラボなど若い層にも訴えかけ、ウェブサイトからの返礼品付き寄附、館内の募金箱、企業協賛など様々な方法を通した支援を呼びかけてきたことにより、プロジェクト開始時に立てた「2022年6月までに1,500万円」という目標を大幅に繰り上げる形での達成となりました。

 

尾形光琳がみずから筆を執って描いた「冬木小紬」

「冬木小袖」とは、尾形光琳が約300年前に、みずから筆をとって秋草の模様を描いたきものです。京都から江戸に出た光琳が滞在した深川の材木問屋、冬木家の夫人のために描いたといわれ、「冬木小袖」と呼ばれています。こうした「描絵小袖」は、まさに一点ものの特注品、当時裕福な女性の間で流行していました。

日本やアジアの文化財は、環境の変化による影響を受けやすく、定期的な修理により良好な状態に保つことが必要です。東京国立博物館ではこれまでも、予算の一部を修理費用に充てることで、継続して文化財の修理を進めてきましたが、その予算は限られており、多くの文化財が修理の順番を待っています。
「冬木小袖」も経年による劣化が進み、汚れや糸の断裂が見られます。また、傷んだ表地を補強するために先の修理で施した並縫いの縫い目が目立っている状況です。

 

「冬木小袖」は、今年1月に修理工房へと運ばれており、2022年末までの2年をかけて修理が進められます。
文化財活用センターでは、今後の修理状況についても、同センターのウェブサイト( https://cpcp.nich.go.jp/fuyuki/ )やYouTube( https://www.youtube.com/c/cpcpnich )等で、2023年に予定している修理後の一般公開まで定期的に報告を行っていくそうです。
また、目標到達後も同プロジェクトへの寄附受け入れは2021年末まで継続し、今後の寄附は東京国立博物館所蔵の文化財の修理費に充てられます。