新型コロナウイルスによる影響により、私たちの社会において様々な課題や脆弱なシステムであったことが明らかになりました。

その一つとして、食料供給システムは都心のスーパーの棚から食材がなくなり、学校の給食や飲食店向けの食材は余るという状況が起きました。

これにより農家も消費者も苦しい思いをしたのではないでしょうか。

こうした不測の事態に影響されにくい農家と消費者の関係、

とくに都市圏と農村の関係の見直しが必要とされます。

 

見直されてきている地域支援型農業(CSA)

地域支援型農業(Community Supported Agriculture)とは、1980年代にアメリカではじまったとされ、

農家と消費者が連携し、前払いによる農産物の契約を通 じて相互に支え合う仕組みです。

欧米を中心に世界的広がりを見せていますが、日本ではまだ事例は少数です。

このコロナ禍において、海外では地域支援型農業による農作物の売上があがったり、需要の急上昇により、新規受入をストップした事例もでてきています。

都心部の食料供給の脆弱さを感じて、農家とつながることで安心して安定的に農作物を得たいという需要が高まったと考えられます。

 

なぜ日本ではCSAの事例が少ないのか

欧米では、農家と消費者の関係を取り持つ啓蒙団体が存在する。その啓蒙団体は、情報提供機能、仲介機能、認証機能をもって、普及に取り組んでいます。

しかし、日本で普及しないのは、啓蒙団体がないだけではなさそうです。

海外よりも日本では安全な農産物が手に入りやすいことがあげられるようです。

以前では前払い制というのが日本には馴染みづらいという意見もありましたが、現在ではサブスクリプションといったサービス形態も浸透してきているほか、オンラインサロンという経営方法も出てきており、今後CSAが伸びる要素があります。

 

日本の有機農産物の浸透の遅れがCSAの普及につながっていない

日本は欧米に比べ有機農産物市場拡大に遅れをとっているなか、2017年1,850億円規模の市場を2030年には3,283億円までに拡大することを目標に掲げています。

欧米では、有機農産物市場の拡大によりCSAが普及した要因があります。

有機農産物という安心、安全といった思考からCSAにつながったと考えられ、今後日本にも普及する可能性が考えられます。

しかし、農家からは、消費者から前払いでもらうことが考えられなかったり、個人経営で行っていることから安定した供給ができないなど導入にあたって不安要素が多いといいます。

 

2021年は農業における変革の年

2020年は新型コロナウイルスの影響、そして安定しない気候から不作でもあった農業。

2021年は農家にとって2020年のようなことを繰り返すわけにはいきません。

飲食店向けに行ってきた農家は、新たな流通開拓もしくはネット販売も視野にいれなくてなりません。

また、現在多く見かけるのは、クラウドファンディングです。

クラウドファンディングにより、先にお客さんからお金をいただき返礼品として農産物を送る取り組みを見かけます。

これもひとつの前払いのCSAといったもいいでしょう。

しかし、クラウドファンディングを何回も行うのは、クラウドファンディングの手数料を考えると消費者も農家もWinWinな関係とはいい切れません。

クラウドファンディングをきっかけに、コミュニケーションを形成し地域支援型農業CSAに取り組んでみてはいかがでしょうか。

また、消費者であるわたしたちは、食材がどのように作られ、どのような経路をたどってきているのか考え、農産物に対する姿勢を見つめ直す必要があります。

農家を応援し、支えることで安定した食材を手にすることができる、都市圏と農村の関係はモノの流れだけではなく、想いも行き来する必要があるのではないでしょうか。

 

参考:農研機構「CSA(地域支援型農業)導入の手引き
農林水産省「有機農業の推進に関する基本的な方針に おける目標値の設定について